1型糖尿病でも障害年金の3級に認定される場合があります。ただし、認定には以下の要件を満たしていることが必要です。
- 初診日において、厚生年金または共済年金の被保険者であること
- 初診日から1年6か月を経過した場合(事後重症)で、65歳以上の方は請求できません
糖尿病とは
代謝疾患の代表的な病気として、糖尿病があります。糖尿病を患っている方は全国で約316万人以上と推定されています。このサイトにお越しいただいた方も、恐らく糖尿病とその合併症を患っている方が多いのではないでしょうか。
合併症のない糖尿病の障害について
平成28年6月1日より、代謝疾患による障害についての認定基準が改正されました。これにより、糖尿病に関して以下の条件のいずれかに該当する場合に、3級の認定が行われます。ただし、認定にあたっては、検査日より前に90日以上継続してインスリン治療を行っていることが確認できることが条件となります。
3級に認定される条件
- 内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/ml未満を示し、かつ、※一般状態区分表の「ウ」または「イ」に該当する場合
- 意識障害によって自己回復ができない重症低血糖の所見が月に1回以上ある場合で、かつ、※一般状態区分表の「ウ」または「イ」に該当する場合
- インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群で入院が年1回以上ある場合で、かつ、※一般状態区分表の「ウ」または「イ」に該当する場合
※さらに、症状や検査成績、具体的な日常生活の状況に応じて、3級より上位等級に認定される場合もあります。
※一般状態区分表
- イ:軽度の症状があり、肉体労働には制限があるが、歩行や軽労働、座業は可能。例えば、軽い家事や事務作業など。
- ウ:歩行や身の回りのことはできるが、時に多少の援助が必要な場合もあり、軽労働は不可。ただし、日中の50%以上は起居している状態。
診断書の書式変更について
平成28年6月の認定基準改定に伴い、糖尿病に関する診断書の書式も新しいものに変更されています。診断書は「腎疾患・肝疾患、糖尿病の障害用」の裏面の「⑭糖尿病」部分に記載があり、追加項目があります。詳しくは当センターにご確認ください。
糖尿病の合併症について
糖尿病に関連する合併症には、次のようなものがあります。
- 慢性腎不全
- 脳梗塞、脳卒中
- 糖尿病網膜症
- 心筋梗塞
- 糖尿病腎症
- 下肢閉塞性動脈硬化症
- 糖尿病神経障害
- 皮膚疾患
特に糖尿病患者の約10人に1人が、「糖尿病性神経障害性疼痛」に苦しんでいます。この症状は、両足の先から左右対称にピリピリとした痛みやしびれを感じるものです。障害が進行すると痛みや温度を感じなくなり、日常生活に支障をきたすこともあります。
障害年金の請求をお考えの方は、まずはお問い合わせください。
合併症の初診日について
糖尿病を患っている方が、その後合併症で受診した場合、初診日の特定が重要です。以下の例をご覧ください。
- 国民年金に加入中に糖尿病で受診し、その後、厚生年金に加入中に脳内出血・脳梗塞で受診し、後遺障害が残った場合。このケースでは、糖尿病と脳内出血・脳梗塞との因果関係がないとされるため、厚生年金加入時の初診日が適用される可能性が高いです。
- 逆に、糖尿病と因果関係がある合併症の場合には、最初に糖尿病で受診した日が初診日として認定される可能性があります。
初診日の確定は非常に重要なポイントです。「相当因果関係」という考え方に基づき、前の疾病がなければ後の疾病が発症しないと認められた場合、その前の病気の初診日が適用される可能性があります。カルテが廃棄されていたり、転院を繰り返している場合には初診日の特定が難しくなることもありますが、あらゆる記録を基に初診日を特定する努力が必要です。
実際のケース例
ある方は、妊娠中に使用していた母子手帳や糖尿病手帳の記録が参考にされ、初診日が特定されました。カルテがない場合でも、これらの記録が有効な証拠となります。
「相当因果関係」がある場合の糖尿病の例
- 糖尿病と糖尿病性網膜症
- 糖尿病と糖尿病性腎症
- 糖尿病と糖尿病性壊疽
- 糖尿病と糖尿病性神経障害
- 糖尿病と糖尿病性動脈閉塞症
これらの例では、糖尿病が合併症の原因となっているため、「相当因果関係」があると判断されることが多いです。
「相当因果関係」がない例
糖尿病性網膜症と障害年金
糖尿病性網膜症は、糖尿病の3大合併症の一つであり、視力の低下や失明に至ることもあります。例えば、インスリン治療を行いHbA1cが10を超えている方が糖尿病性網膜症を併発し、視力が低下している場合、眼の診断書を提出することで等級の変更があるかもしれません。両眼の矯正視力が0.1以下である場合には、糖尿病の3級と併合して2級に認定される可能性もあります。
内科疾患の総合認定について
内科的疾患が複数ある場合、併合ではなく総合的に認定されることがあります。この総合認定では、2つの3級が必ずしも2級に統合されるとは限りません。2級と3級を併せて2級のままとなる場合もあれば、1級に認定されることもあります。
総合認定の例:糖尿病と肝硬変
ある男性が、糖尿病と肝硬変によりそれぞれ障害厚生年金3級の認定を受けていましたが、7年後に統合失調症の初診日をもとに障害基礎年金2級を請求しました。その結果、糖尿病は2級に額改定され、精神障害の障害基礎年金2級と併合され、最終的に1級に認定されました。
まとめ
糖尿病は、単体での障害年金請求よりも合併症や総合認定を視野に入れることが重要です。専門的な知識を要するため、専門家と連携しながら進めることが、確実な請求に繋がります。当センターでは、これらの複雑な申請プロセスをサポートしていますので、どうぞお気軽にご相談ください。