障害年金の申請における困難と社会保険労務士の役割
がん患者でも障害年金の申請が可能ですが、実際に通すためには多くの困難が伴います。申請の初診日は、診断日ではなく、最初に診察を受けた日から1年6ヶ月後の「認定日」が基準となります。この認定日の段階で病状が安定していると、生活に支障が出るまで申請を見送るケースも多く、がんの進行や副作用による体調変化も予測しにくいため、「どの時点で申請すべきか」の判断は難しいものです。加えて、年金事務所や医師に病状を共有することも、専門的な支援がなければ多くの時間がかかる場合があります。
患者や家族から「がんでは障害年金は申請できない」「目に見える障害でないと通らない」といった誤解もよく聞かれます。また、治療が通院中心だと、治療日に体調が安定している一方で自宅での体調不良が見えにくく、状況説明のハードルが高まります。
なぜ代行業務は社会保険労務士が行うのか
医療機関によっては、医療ソーシャルワーカーが申請書類の作成をサポートしてくれる場合もありますが、どこまで支援してもらえるかは病院ごとに異なります。そして「患者が作成する申立書の記載や修正」といった代行業務は、法律上、社会保険労務士のみが行えるものです。
患者やご家族からは「依頼するとお金がかかり、障害年金を使い切ってしまうのではないか」「依頼するメリットがあるのか」という不安が多く聞かれます。もらえる年金は家族の生活に使いたいという気持ちもわかりますが、社会保険労務士が代行を有料で行っているのは、その作業に専門知識と膨大な時間がかかるためです。また、月々の年金額に関する業務であるため、責任が大きく、誰でもできるものではありません。
他人が代行することは法律上問題ですが、何かトラブルが生じた際、誰が責任を負うのかという問題も発生します。がんの症状や治療状況は個別性が高く、法的に適正なアドバイスを受けられることが何より大切です。
無収入期間を減らすために代行を依頼する意義
がん患者の申請は「事後重症」に該当する場合があり、認定日から時間が経過すると、受け取れる年金が減少することがあります。例えば、月10万円の障害年金が6ヶ月遅れると、最大で60万円を受け取れない事態になります。こうした経済的な損失を避けるため、手付金や成功報酬を支払ってでも社会保険労務士に依頼する意義は大きいと考えられます。
社会保険労務士でも対応できないこと
社会保険労務士は、年金の加入要件を満たしていない場合や症状を実際以上に重く表現するなどの行為は法律に反するため行えません。しかし、障害年金の申請において必要なサポートは法の範囲内で責任を持って行い、患者と家族が最大限の支援を得られるよう進めます。
さかのぼって申請するケースとその重要性
認定日の段階で障害年金の等級に該当していたものの「障害年金を知らなかった」「諦めていたが該当するかもしれない」といった理由で未申請だった場合、最長5年までさかのぼって申請できるケースがあります。がんの場合、治療が長期化しやすいため、社会保険労務士の力を借りて、遡及申請が可能か確認することも重要です。
自分で申請するか迷ったときは相談を
障害年金の申請は本人でも行えますが、病状説明や書類作成が難しいと感じた場合は社会保険労務士に相談するのも一つの手段です。また、傷病手当金が終わる直前の3ヶ月前など、早めに相談することが後々の生活設計に役立ちます。
信頼できる社会保険労務士を探すには
社会保険労務士の中には、がん患者の障害年金に詳しい方がいます。口コミやホームページ、無料相談を利用し、信頼できる社会保険労務士を選びましょう。特に、病院の関係者との協力が必要になる場面では慎重な選択が求められます。
がん患者の障害年金受給は、治療中の生活を支える大きな力となります。一人で悩まず、専門家である社会保険労務士の力を借りることで、受給の道が開ける可能性が高まります。